目次 ▼1 ▼2 ▼3
魔王の城(後編) ―絶対正義二次元愛―

▲  1  ▼

桃色の魔力を繰りながら、魔王は喋った。
darkspirit「この最後の覚醒は、僕の最終兵器にして最強兵器……
  魔力に触れた女性キャラは萌えキャラとなり、萌えな行動しかとれない!」

魔力は津波のようにブロントたちを襲った。
避けそこねて、リンが魔力の波に飲まれた。
blues「リンさんっ!!」

ブルースは呼びかけて、リンの姿を探した。
魔力の波打ちぎわに打ち上げられたリンは、上半身を起こしながらけだるそうに言った。
rinn「あら〜ブルース君〜、おはよう〜。ふあぁあ……
  ごめんねぇ〜、おねーさん朝弱いから、まだ眠いの〜。
  血行促進にいいって聞いたし〜、シャワーでも浴びようかしらぁ〜。
  でも頭がフラフラするから〜、ねぇブルースくぅん、バスルームまで連れてって〜」

ブルースはがく然とした。
blues「こ……これは姉キャラ&低血圧!?
  例えばまだ純粋な小学男児にとって、友達の家で出会うお姉さんは未知の香り漂う大人の女性そのもの!
  まだ子供なクラスの女子とは違うその成熟した肢体はフェロモンの塊、
  そんな女性とひとつ屋根で平然と暮らす友人に、男兄弟しかいない少年は何度嫉妬したことか!
  その上そのお姉さんが低血圧ときたら、少年の妄想ボルテージは急上昇!
  寝起きでフラフラしたお姉さん、ボーっと意識を飛ばしてダイニングテーブルにつくお姉さん、
  テーブルにしなだれかかって胸を押しつけるお姉さん、着替えながら夢に落ちて倒れるお姉さん!
  その無防備すぎる姿を見て少年は大人の階段を登らずにいられようか!?
  これは……萌えだッ!!」

ブルースは熱弁して、熱い汗を流した。
周りは逆にヒいていた。
その中で魔王は、一人でテンションを上げていた。
darkspirit「あはははははは、萌えだ、萌えがどんどん増えていく……!
  そうさ、僕が世界を征服しようとしたのは! すべてこのため!!
  『世界中の女性を萌えキャラ化して二次元世界に住むこと』!!
  この最後の覚醒は使ったが最後、もう雷撃も他の覚醒も使うことができない!!
  だから今まで回りくどいことをやってきたけど……もうそんな余裕はない!!
  全魔力を使って世界を萌えにするのだ!! するのだ――――ッ!!」

桃色の魔力が、雪崩のような規格外の出力で放出された。
zilva「ちィッ――!!」

ブロントたちは女性陣を守りながら逃げるのに精一杯だった。
かわしながら、クロウは立ち止まっている男たちに呼びかけた。
claw「おいルファ、ブルース!!
  貴様たちも協力しろ、まだ魔力を受けていない女たちを防御するんだ!!」
lufa「萌え……」
blues「萌え……」
claw「おーいッ!?」

魔王はヤバイ笑いをとどろかせた。
darkspirit「あーひゃひゃひゃひゃひゃ、無駄だ無駄だよ!!
  ディメンションシーカーのもうひとつの能力は!!
  『萌えキャラ化した女性に萌えた男性をオタクキャラ化させる』ことだ!!
  そいつらはもう戦士じゃない!! ただのキモいオタクだ!!」
claw「く……なんということだ……!」

魔力が渦巻いて、ティンクを抱いたクロウはその中心に孤立した。
クロウは剣を振った。
claw「白桜乱舞!!」

白く舞った斬撃は、しかし桃色の魔力には針のように小さかった。
クロウは魔力に飲み込まれた。
claw「うああッ――!!」
tink「クロ兄……っ!!」

高エネルギーの魔力にクロウだけがはじかれて、ティンクに魔力が打ち込まれた。
傷を負ったクロウは、その身を引きずりながらティンクの名を呼んだ。
桃色の魔力が霧散した中で、ティンクは言葉をつむいだ。
tink「ちょっとお兄ちゃん! この携帯に入ってる女の子の名前、いったいなんなの!?
  まさか彼女とかじゃないでしょーね!?
  え? 俺に彼女がいたら困るのか、って?
  かっ、勘違いしないでよね!! べべべ別にお兄ちゃんに彼女がいようがあたしには関係ないわよ!!
  ただ、もし変な女にだまされてたりしたらかわいそう……じゃなくてっ、
  こっちもいい迷惑だから仕方なく心配りしてあげてるだけなんだからねっ!!///」

クロウはがく然とした。
claw「こっ……これは妹キャラ&ツンデレ!?
  男兄弟しかいない男が他人の妹にあこがれるのは姉キャラ萌えの流れに類似するが、
  決定的に異なるのは姉キャラ萌えでは幼い男が大人な女性にあこがれるのに対し、
  妹キャラ萌えはそれなりに高年齢で知識の備わった男がピチピチの少女に想いをいだくという点!
  彼女いない歴イコール実年齢の男性は、花の女子中学生や小学校高学年がひとつ屋根にいればと渇望する!
  何も知らないいたいけな妹もいいが、ちょっと知識のついてきた感じならなお良好!
  そしてツンデレは、言わずもがなギャップ萌えの境地!
  普段はツンツンしているがここぞというときにデレられるそのギャップに男は悶絶するのだ!
  そして妹キャラとツンデレの融合でのみ現れる最高の萌えが妹の友人によるこのひと言!
  『○○ちゃんっていっつもお兄さんのことばっか話してるんですよ〜』……ッ!!
  そう!! 普段ツンツンでも自分のいないところではデレまくりなのだ!!
  目の前でバラされて赤面してあせる妹の顔も合わせて、これぞ究極、至高!!
  これは……萌えだッ!!」
temi「ああっ、クロウ君まで……!」

桃色の魔力はとどまるところを知らなかった。
魔力はさらにマゼンダを向いた。
magenda「くうっ――!!」
zilva「マゼンダ――――っ!!」

炎による抵抗もむなしく、マゼンダは魔力に取り込まれた。
魔力を吸収したマゼンダは、淡々とした口調でジルバに語った。
magenda「出席番号13番、名前はジルバ。
  あなたは本日日直でありながら、黒板を消していない。
  そのため委員長である私は、あなたの代わりに黒板を消した。
  この行為はあなたが先生に怒られることを防ごうという親切心ではなく、
  委員長として先生が授業を行う上でわずかなりとも障害を減らすべきであるという責任感から行ったものであり、
  たとえ本日の日直があなたでなかったとしても委員長として必ず行った行為であることを断っておく。
  そして……委員長という肩書きは、学校の中でのみ成立する便宜的なものでしかないということも、断っておく」

ジルバは沸騰した。
zilva「こっ……これは委員長&クーデレ!?
  委員長キャラに組み合わせるのはツンデレが相場だが、俺は断然クーデレを推すぜ!!
  クーデレとはすなわち、『普段はクールで感情をあまり表さないがここぞというときにデレる』様!
  普通の人とは違う空気を持ち決して相容れないようなオーラを出す女性、
  その奇妙さが逆に妄想をかき立て男の心を惹きつける!
  そして委員長はいうならば『公』のイメージの体現化!
  公の人間である委員長はすべての人間に平等に接しなくてはならないという原則があり、
  そこがクーデレに通じるとともに一人の人間へと傾倒することへの葛藤っつーものが生じてグッドだ!
  ついでに人と接するのが苦手な分、もし仲良くなったら自分だけと親しくなるってのもこの二属性のポイントだな!
  これは……萌えだぜ!!」

桃色の魔力を奔流させながら、魔王はニタァーッと笑った。
その笑みの先には、完全に孤立したブロントとテミがいた。
魔王は手の甲で流れ落ちるよだれを拭き去ると、その手を上にかかげて二人へ言葉を送った。
darkspirit「君たちで終わりだよ……ブロント、テミ……
  絶対正義の監獄へ葬って、そしてこの冒険は、終わりだ……!」

魔王はかかげた手を振り下ろした。
ブロントは見上げて、それを視界に収めた。
空間全体を覆い尽くすような桃色の魔力が、二人に打ち下ろされた。


▲  2  ▼

darkspirit「――えっ?」

そのとき魔力は、魔王にとって理解不能な動きを見せた。
桃色の魔力は、ブロントたちに衝突するとはね返されて見る見るうちに蒸発していった。

魔王は、しりもちをついた。
彼の正面で、魔力の蒸気で姿のぼやけたブロントが、語った。
blont「君は、戦う舞台を間違えた」

ブロントの歩み寄る足音が、こつりと一歩響いた。
その胸にテミを抱き寄せながら、ブロントは青い瞳を魔王に向けて言った。
blont「あるいは魔力での対決なら、僕らに勝ち目はなかったかもしれない。
  君の魔力は、僕ら十人で相手しても抑え込むことができないほどだったから。
  なのに、君は最大の過ちを犯した」

魔王は、震えていた。
奥歯をがちがちと鳴らして、歩み寄るブロントをただ見すえるだけだった。
ブロントは続けた。
blont「この冒険を根底から支える絶対の事実。
  それは、僕たちの愛が誰にも負けない無敵のものだということ。
  君は愚かにも、その愛を上書きしようとした。
  僕らの愛はどんな魔力にも、いわんやしょせん流行り物でしかない萌えにも変えられないというのに」

ブロントは魔王を見つめた。
ブロントの胸の中で、テミも茶色の瞳を向けていた。
魔王は打ち震えた。
darkspirit「あ、ああ……あああ……」

ブロントは歩み寄る足を踏みとどめた。
そして威圧とともに、部屋全体へ向けて一喝した。
blont「恋愛は世間のブームでやるもんじゃない!!
  心のブームでやるものなんだ!!」

衝撃波が起こった。
魔王は吹き飛ばされて、無様に顔面を床に打ちつけた。
衝撃波はまた、仲間たちの目を覚まさせた。
blues「……ブロント!」

ブロントは、仲間たちに微笑んだ。
それからテミを抱えて、魔王へと走り寄った。
魔王は、腰が抜けて逃げられなかった。
甘い威圧の余韻を残して、ブロントは唱えた。
blont「物語の終焉として、せめていさぎよくピリオドとなれ……
  ハイパートルネード――テミハンマー!!」

超高速のテミハンマーが、魔王にぶち当たった。

そしてその打撃は、魔王の角だけをへし折った。
blont「――な」

魔王はにやりと笑った。
振り抜かれるテミハンマーに三本の角の破片を飛ばされながら、魔王は喋った。
darkspirit「キャハハ……ざまあみろ……
  とっさに首を動かして、角で防御してやった……
  でも角を失ったら、もう桃色の魔力を出すことができないや……
  はは……二次元世界に住むという僕の目的は、もう、果たせない……かあ……」

魔王は右手に魔力を溜めた。
テミハンマーをフルスイングしたブロントには、わずかにスキが生じていた。
ひたいからぱたぱたと血をこぼしながら、魔王は喋り続けた。
darkspirit「でも……キャハハ! いっこだけツイてる……!
  絶対正義二次元愛(ディメンションシーカー)を強制解除したから、雷撃が発動できる……!
  どうせ死ぬなら、てめーが僕よりバカだと思ってスッキリした気分で死んでやる……!
  てめーを道連れで殺してやるさ、バカでドジなアホブロント!!」

ブロントの胸に、魔王の右手が当てられた。
目を見開くブロントを見ながら、顔を極端にゆがめて魔王は言い放った。
darkspirit「ゼロ距離なら、避雷針なんて関係ないよね!?」

ジルバたちが叫んで、走り寄ろうとした。
それでは到底間に合わなかった。
魔王の右手から、雷撃が放出された。

そしてその寸前に、魔王の右手は矢に射抜かれてはじかれた。
darkspirit「な……!?」

ブロントの胸から滑り落ちた右手は、何もない方向へ雷撃を吐き出して終わった。
魔王は無意識に歯ぎしりした。
彼の周りには、屋内にもかかわらず風が吹いていた。
その風の流れに乗って、声が届いた。
blues「悪あがきなら、僕だってする……
  かっこ悪いと自分では思うけど、それでもそんな僕をかっこ良いと言ってくれる人がいて……
  今……分かった気がする。
  本当にかっこ悪い悪あがきっていうのは、『人を見下して保身する』ための悪あがきだったんだ。
  今の君は……かっこ悪いよ」

魔王は、目を血走らせた。
その口が何か意味のある言葉を発する前に、ブロントはかなでた。
blont「僕の心臓は、雷撃なんかじゃ止まらないよ……
  それを止められるのは、ただひとつ。
  僕のハートをわしづかみにした、テミの可憐な両手だけだ」
temi「ブロント君っvvv」

桃色ワールドが、二人の周りに展開した。
魔力を全身にみなぎらせながら、ブロントは唱えた。
blont「冒険はそして、マリアージュへ――
  ハイパートルネードテミハンマー エンドレスハネムーン!!」

テミハンマーをひねりながら、ブロントは回転した。
二重の回転によって生み出された破壊力が、魔王の体を打ち鳴らした。
魔王は一瞬、打撃に押されて圧縮した。
そして次の瞬間、破壊力は打撃面の反対側で亀裂となった。
魔王の体がひび割れて、その隙間から魔力があふれ出た。
抑えきれなくなった魔力は光となって、全員の視界を白く飛ばした。
光は柱のように上へ上へとそびえ立って、天井をぶち破った。
柱は飽き足らず上を目指して、とうとう雲まで到達して、灰色の天空を打ち抜いた。


▲  3  ▼

kobold「あれは……!」

雪原の岩穴にとどまっていた銀狼は、膨大な魔力を感じて穴の外へ出た。
魔王の城の方角に、巨大な光の柱が雲をつらぬいて伸びているのが目視できた。
銀狼は目を細めて、やったのか、とつぶやいた。

穴の中で、動く気配がした。
銀狼は振り返った。
糸が切れた人形のように身動きひとつしなかったギャラックが、わずかに体をよじらせていた。

銀狼は駆け寄って、声をかけた。
kobold「ギャラック!?」

ギャラックは、うっすらと目を開けた。
ぼやけた目で銀狼の顔を見ると、かすれた声をこぼした。
gargoyle「銀……ちゃん? 銀ちゃんやの……?
  なんで、そんな、おじいさんみたいなしわしわの顔になってるん……?
  あたしら、昨日まで一緒に、おままごととかしてたはずやのに……」

その瞬間、銀狼はすべてを悟った。
魔王はギャラックを操作するために、自尊や猜疑のような邪魔な要素にあふれた精神を破壊した。
その結果、ギャラックの中には、自尊も猜疑もない、幼少時代の精神だけが残っていた。

銀狼は一瞬言葉を詰まらせて、それから微笑みを作って、語りかけた。
kobold「ギャラック。
  君が寝てる間に、ワシだけ……いや、僕だけが、歳を取ってしまったみたいなんだ」

ギャラックは、銀狼の顔を見ながら小刻みに震えていた。
その目からぽろぽろと涙をこぼしながら、ギャラックは銀狼に呼びかけた。
gargoyle「銀ちゃん……あたし、怖い……
  寝てる間、ずっと、怖い夢を見てた気がする……
  でも目を覚ましたら、もっと怖いことがあるような気がするんよ……
  銀ちゃん、どんな世界なん?
  ここから外に出たら、どんな世界があるのん?」

銀狼は、返答に窮した。
しばらく押し黙って、それから、ゆっくりと振り返った。
光の柱は、変わらずに天へと伸びて太陽のように輝いていた。
銀狼の顔が、その輝きに照らされた。
瞳を反射でつやめかせながら、銀狼は語った。
kobold「いい……世界だ。
  争いは何もなく、あるのはただ、両腕いっぱいの愛だけだ。
  これからおまえが生きるのは、そういう世界だ」


   *


天井も雲も切り開かれた空は、青く澄み渡っていた。
あお向けに横たわる体を、すがすがしい風がなぜていった。
魔王は、一度風を肺臓に取り込んだ。
それから呼気と一緒に、言葉をつむぎ出した。
darkspirit「殺さなかったんだね、ブロント」

そばで腰を下ろしていたブロントは、顔を向けるとにこりと笑った。
blont「角を折っちゃえば、生きていたって悪いことはないかなと思ってね。
  雷の書だけは、封印テープを貼っといたけど」

魔王は言われて、ティンクのメテオの書に貼られたテープのことを思い出した。
魔王はそのテープがニセモノだと知っていた。
そのことを理解しているのかブロントに尋ねようとしたが、思い直して口には出さなかった。

ブロントは立ち上がって、後ろを振り返った。
日の光を浴びてきらきらと輝くテミが、そこにいた。
その後ろに、八人の仲間たちが立っていた。
ブロントは微笑んで、彼らに言葉を送った。
blont「かけがえのない戦友たち。
  僕たちは、勝利した。
  どんなピンチに立たされても、君たち一人一人の力のおかげで乗り越えることができた。
  この中の誰か一人でも欠けていたら、きっとこの勝利はなかったはずだ」
rinn「あの〜、約一名妄想のネタに使われただけで終わった人間がいますが……」
blont「僕ら九人がそろっていたからこそ、この勝利を得られたんだ!!」
rinn「ふえ〜ん、数にすら入れてもらえてません〜;;」

ブルースになだめられるリンを軽くスルーしながら、ブロントはまた後ろを向いた。
天井も壁も吹き飛ばされた城の残骸からは、大陸の全景がよく見渡せた。
ブロントはふっと笑って、仲間たちに背を向けたまま言った。
blont「帰ろうか、それぞれの場所へ」

そのとき、何かがひらひらと舞った。
雪のように見えたが、雪ではなかった。
テミが声を上げた。
temi「桜だ!」

その場にいた全員が空を見上げた。
さわやかに吹き渡る風の中に、桜の花びらが浮かんでいた。
流れても流れても花びらはどんどん舞い続けて、辺りは桜吹雪となった。
長い髪をなびかせながら、ルファが言った。
lufa「もう、春ですねえ」

ルファは手ぐしを入れた。
髪の毛にまとわりついた花びらは、ルファの指先にからめ取られた。
手のひらに収まった花びらに、ルファは顔を寄せた。

そして花びらは、一斉に口を開いた。
temi「テミテミ〜」
temitemi「「テミテミ〜」」
temitemitemi「「「テミテミ〜」」」
temitemitemitemi「「「「テミテミ〜」」」」
temitemitemitemitemi「「「「「テミテミ〜」」」」」
lufa「ぎゃああああああああああ!!」

ルファは狂乱した。
周りにいた他の仲間たちも、その恐るべき状況を認識した。
桜の花びらは、テミフラワーと化していた。
実は魔王をテミハンマーで殴ったとき、ブロテミの桃色魔力が魔王の中に流れ込んでいた。
そして桃色魔力を含んだ魔王の魔力は雲を突き抜け空で反射し大陸全体に降り注ぎ、
テミフラワーを大増殖させていたのだった。

地響きが鳴り渡った。
何事かと面々は、大陸に目を向けた。
大陸中に住んでいた人々が、激怒して城へと押し寄せていた。

「こりゃ〜!! わしの作物になんてことしてくれたっぺ〜!!
 でーこんもじゃげえももみーんなテミテミになってしもうて、売りもんにならんっぺ〜!!」

「あたくしの宝石もみーんなテミテミになってしまったザマス!!
 ゴージャスさも気品も何もかも台無しになって、ン億万がパーになったザマス!!」

「ぼ、僕の魔法少女フィギュアもテミテミになっちゃったんだな!!
 こ、これじゃ、萌えないんだな!!」

ブロントははっはっはと高笑いした。
その後ろで、仲間たちが怒りのオーラをほとばしらせていた。
magenda「ブロント、あんたって人間は〜(ピキピキ)」
blues「最後の最後まで〜(ピキピキ)」
claw「とんでもなく厄介なことを〜(ピキピキ)」
tink「引き起こしてくれたっすね〜(ピキピキ)」

のっぴきならない事態に、テミはおろおろしていた。
そのテミの手を、ブロントが握った。
blont「逃げるよ、テミ」
temi「へっ?」

ミドリから、攻撃開始の号令が出た。
midori「各員砲撃、ふぁいやー!!」
temi「きゃーっ!!」

仲間たちから、集中砲火の雨あられが降り注いだ。
ブロントは笑いながら、テミをお姫様抱っこして逃げ回った。
仲間たちは追い回した。
魔王も押し寄せる人の波に飲まれないよう、必死でついていった。
ブロントの笑い声が響き、テミは鼻血を噴き出し、そこに攻撃が降り注いで焼け野原となっていった。
テミフラワーはそんな大地にも、しっかりと根を下ろしていった。



そして、世界は平和になった。
あるのはただ、両腕いっぱいの愛と、大陸いっぱいのテミフラワーだけだった。
ありがとう、ブロント。そしてテミ。
君たちのおかげで、世界は救われた。

zilva「救われてねぇ――――――――!!!」

ジルバの叫びはエコーとなって、いつまでも大陸に響き渡っていた。

それもまた、一興。



     〜魔王の城Clear!
          そして『うぃずらばー 愛と笑いと冒険と』完結!!
                      応援ありがとうございました!!〜


▲1 ▲2 ▲3



目次 小説一覧 トップ