目次 ▼1 ▼2 ▼3
第2ステージ 蜂の巣

    

空には太陽が、きらきら。
空が輝き、雲が輝き、木が輝き、草が輝き、岩が輝き、そして王座が輝く。
彼は今、人生で最高の時間を体中で満喫していた。
彼の人生の中で、これだけ幸せなことがあっただろうか。
blues「ふふ……ふはは……ふはははははは!
  とうとう僕は上りつめた! 上りつめたんだ!
  僕はキングになったんだ! ざまみろブロントめ!」
blont「本人ここにいるんだけどね、ブルース君」
blues「うわぅっブロントいつの間に!?」

ブルースは驚いて変なポーズで飛び上がった。
王座の後ろにブロントが仁王立ちしていた。
blont「ジルバから強奪した天馬の靴でささっとね。
  しかしブルース、蜂の巣でキングになって嬉しいか?
  周りの光沢は全部ハチミツじゃないか。アホだろ」

王座を指でなぞりながらブロントは言った。
指が動くにつれ大量のハチミツがまとわりつき、上に持ち上げるとつらつらと糸を引いた。
blues「黙れブロント、キラークイーンを嫁にもらう気持ちも分からないくせに!」
blont「分かりたくないし。てか君すでにハチミツだらけになってるよ」
blues「えーいうるさいっ、さっさと倒してやる!」
blont「矢が射れないほどベトベトになってるし」

ハチミツが接着剤のように働いて、ブルースの指も矢筒の矢もごってごてになっていた。

「ぁぁぁぁぁああぁあぁぁあああぁああぁぁあぁあああ」
blues「な……なんだよぉこの声……」

突然響きだした声に、ブルースはきょろきょろと左右を見回した。
方向は分からない、だが近づいてくる。
blont「上だよ」
blues「へっ?」

がつん。
上を向いたブルースの顔面に、まっすぐテミが突き刺さった。
blues「はうぁっ……」
temi「うえ〜〜ん、ひどいよひどいよブロント君〜〜っ」

鼻血を出してぶっ倒れたブルースには目もくれず、テミはブロントに泣きついた。
temi「移動力の差考えてよぉ〜、ブロント君早すぎるんだからぁ〜」
blont「ははは、何言ってんだよテミ」

ブロントはそっとテミを抱き寄せて、甘い声でささやいた。
blont「たとえどんなに離れたって、僕らは赤い糸でつながってるだろ?」
temi「ブロント君っvvv」


    

blues「おいおいおーい、ただでさえ甘ったるいフィールドなのに、
  さらに甘いところへ入り込まないでくれよー」

ベトベトのブルースからベタベタのブロテミへ力のないツッコミが飛んだ。
blont「フィールドもそうだけど君のツッコミも脇が甘いよ、ブルース君?」
temi「っていうか、なんか誰がツッコミで誰がボケかわかんなくなってきた。
  描写も減ってるし」

描写は最低限あればいい。ギャグ小説だから。
blues「えーいもうどうでもいい!
  キラービー軍団! 二人を叩きのめせ!」
blont「ハチミツでくっついて動けなくなってるよ」
blues「あんたらハチでしょ――――!?」
killerbee「びぃー」

キラービーたちはハチミツに絡まれ固まって、そこいら中にハチ団子が転がっていた。
blues「あーもー仕方ない、それならスライム軍団ゴー!!」
blont「そんなもんとっくに同化してるって」
blues「ああああ辺りに青いハチミツがああ――――!!」

青いハチミツについては読者の想像に任せる。
blues「それならウィスプ軍団だ――――!!」
blont「蜂の巣にいないよ」
wisp「ピィー」
temi「来ちゃったし」

ウィスプ軍団の襲来により周囲の気温が急上昇した。
それによりハチミツの水分が飛び、きれいな結晶が現れた。
太陽の光とウィスプの灯りを乱反射し、見事な光沢を放っている。
temi「ってハチミツの主成分は糖分だから炎を近づけたら」

糖分の塊にウィスプの炎が点いて燃え広がった。
実験してみると分かるのだが、実は糖分というのは非常に燃えやすく、
草や木や紙などと比にならないほど早く燃え広がってしまう。
(火を使った実験は危険なのでちびっ子は大人と一緒に実験しましょう。
マジでよく燃えますから)
よって炎は瞬く間に広がり、蜂の巣は未曾有の大火災に襲われた。
blues「わわわわ熱いよー! 助けて――――!!」
blont「ウィスプなんか呼ぶのがいけないんだよ」
temi「自業自得だよねーって言ってる場合じゃなーい!!
  私たちも焼け死んじゃうって――――!!」


    

blues「あっちちち熱ちいー!! 助けてー!!」

ハチミツまみれになっていたブルースはあっという間に火だるまになった。
temi「ぶ、ブロント君……私たちも早く逃げないと焼け死んじゃうよ」
blont「ふふふ、何言ってんだテミ?」

うろたえるテミにブロントは甘い声でささやいた。
blont「僕らの愛より熱いものなんてないだろう?」
temi「ブロント君っvvv ハチミツよりも甘いよーwww」

二人の周りに甘い甘い二人だけの桃色世界が展開された。
誰も立ち寄ることのできない、二人だけの甘い世界。
それによって周りの炎から遮断され、二人は焼死をまぬがれた。
blues「んなアホな……がくり」

数時間後。
激しく燃え盛った炎も燃やす対象がなくなって収まり、
辺りには黒焦げの植物とモンスターの死骸とブルースだったものが転がっていた。
blont「せっかく疾風の指輪も装備してたのに。かわいそうにね」

ブロントとテミは火災が収まったことを確認すると桃色世界から現実世界へ舞い戻った。
リアルワールドでは蜂の巣がめまぐるしく燃え盛ったが、
アナザーワールドに隔離された二人もきっとめまぐるしく燃え盛ったのだろう。
いや……人格が疑われるので細かいことは言わないが。
blont「さて、敵は全滅したようだし、次のステージへ進もうか」
temi「次はどこへ行くの?」
blont「順番的には古代遺跡だね。何が出るか楽しみだ」
temi「草原と蜂の巣の様子からいってまた変なことになってそうだけど」

いろいろと言葉を交わしながら、二人は歩き始めた。
明るい日差しが降り注いで、彼らの髪は金色(こんじき)に輝いている。
陽光は、勝者も敗者も平等に照らす。
今、二者の間にどんな差があったかといえば、それは「愛」なのかもしれない。
消えゆく意識の中、ブルースはそんなことを考えていた。
blues(って、僕はまだ死なないぞ!
  くっそー、ブロント、今度は僕が勝つからな!)
zilva(俺だって死んじゃいねえ。見てろよ、今に逆襲してやる)

          〜蜂の巣Clear!〜


▲1 ▲2 ▲3

第3ステージ 古代遺跡

目次 小説一覧 トップ